「日中はメガネやコンタクトなしで過ごしたい」「子どもの近視進行をできるだけ抑えたい」。そんなニーズに応える選択肢がオルソケラトロジー(オルソK)です。夜寝るときだけ特殊な高酸素透過性ハードレンズを装用し、角膜の中央部をわずかに平坦化させることで、朝レンズを外しても裸眼で見える状態をつくる可逆的な視力矯正。一般に国内承認の適応目安は近視 −1.00D〜−4.00D、乱視は〜−1.00D(レンズにより差)で、やめれば通常数日〜数週間で元の見え方に戻る点が大きな特徴です。

私も子どもの視力が悪くなり、1年ほどはメガネとマイオピンで矯正していたのですがメガネが似合わないのとスポーツや運動習慣に邪魔になると思ったのでオルソケラトロジーに移行しました。
1) 何をする治療?どう効く?
仕組みはシンプル。夜間のみ高Dk(酸素透過性の高い)ハードレンズを装用し、角膜表面の形状を穏やかに整えます。これにより日中は裸眼で過ごせるようになります。多くのケースで初夜から裸眼視力の改善を自覚し、1週間前後で安定、最大で約30日で安定化が目安とされます。日本では2006年に承認され、学会のガイドラインや添付文書自主基準も整備されています(オルソケラトロジー ガイドライン(第2版)、添付文書自主基準)。
2) 期待できる効果(2本柱)
A. 日中裸眼での見え方(屈折矯正)
低〜中等度近視の方で、日中はメガネ・ソフトコンタクト不要を実現。競泳やダンス、球技、粉塵の多い現場、ドライ環境など「日中にレンズを入れたくない場面」と相性が良いのが強みです。
B. 近視進行抑制(小児〜思春期)
小児〜思春期における眼軸伸長の抑制が多数の研究で示され、メタ解析では年間の伸長量をおよそ30〜60%低減という報告も。低濃度アトロピン点眼や多焦点ソフトコンタクトと並ぶ近視コントロール手段で、併用で上乗せが示唆された研究も存在します(レビュー例:Cochrane)。
3) メリット(向いている理由)
- 手術ではない・可逆:LASIKなどと異なり、やめれば元に戻るため将来の選択肢を残せます。
- 日中裸眼の自由:スポーツ・水場・粉塵/乾燥環境でレンズ煩わしさを回避できます。
- 小児の近視コントロール:平均3〜5割の抑制というエビデンスが蓄積。屋外活動の確保や近業の休憩と併せて総合対策に。
- 安全性プロファイルが確立:正しいケアと定期フォローで、夜間装用系として一般的なリスク水準に管理可能とするレビューがあります。
4) デメリット・リスク(知っておくべき点)
リスク/弱点 | 内容・頻度感(目安) |
---|---|
微生物性角膜炎 | 夜間装用ゆえリスクは0ではない。推定で成人約7.7/1万人年、小児約13.9/1万人年程度との報告も。 ケア遵守・定期受診・正規品使用で低減可能。 |
夜間のハロー・グレア | 初期やレンズ偏位で光のにじみが出やすい。暗所瞳孔径が大きい人は慎重に適応評価。 |
適応範囲の限界 | 高度近視、強い乱視、円錐角膜、重度ドライアイなどは不向き。 |
毎日の手入れと通院 | こすり洗い+消毒+定期検診が前提。面倒さが事故率に直結します。 |
費用 | 日本では初期15〜20万円(両眼)前後+定期検診・ケア用品・数年ごとのレンズ交換など(自費)。 |
個人的には何よりも良かったのは見た目が良くなり眼鏡の時はイジメやからかいの対象になった事もあったのですが、オルソケラトロジーに変えてから明らかに周りの目線が変わった事です。決して安い費用ではないですが、子ども同士だからこそ見た目を良くして自信をつける経験は役に立ったと思います。
5) 使うときの注意点(安全運用チェックリスト)
装用前(処方時)
- 適応評価:角膜地形図、角膜形状・涙液、屈折度、暗所瞳孔径など。未成年は保護者同席でセルフケア能力まで確認。
- 説明:初期の見え方変動、ハロー・グレア、感染症リスク、トラブル時の即中止→受診の行動計画を共有。
毎日のケア
- 界面活性剤でこすり洗い+消毒(PVPヨード等)を毎回徹底。
- 水道水はレンズ・ケースに直接使わない。洗浄後はケースを乾燥し、定期交換。
- 痛み・充血・かすみを感じたら装用を中止し、受診までレンズは外す。
装用スケジュールとフォロー
装用は毎夜が基本(維持期は医師指示により隔夜になることも)。受診目安は翌朝→1週→1か月→3か月→以降3か月ごと。初期は夜間運転を控えるのが無難です。
生活上の注意
- 発熱や体調不良、アレルギー悪化時は装用を休む。
- プール・温泉・湖水での装用禁止(アカントアメーバ等の感染リスク)。
- 睡眠時間が短い日はフィットが不十分になりやすいので、適正な睡眠時間を確保。
6) だれに向いている?向かない?
向いている:低〜中等度近視で日中裸眼の利便性を重視する人(運動部・水泳・粉塵/乾燥環境の仕事など)、小児〜思春期で近視が進みやすい家庭。
向かない:高度近視・強乱視、円錐角膜、角膜疾患、重度ドライアイ、レンズ衛生管理が難しい人。
7) 他法との比較(超要約)
方法 | 可逆性 | 装用/施術 | 近視抑制 | 合併症リスクの主眼 |
---|---|---|---|---|
オルソK | 可逆 | 夜のみレンズ | ○(3〜6割) | 夜間装用に伴う角膜感染管理 |
多焦点ソフトCL | 可逆 | 日中レンズ | ○ | ソフトCL一般の清潔・乾燥管理 |
低濃度アトロピン | 可逆 | 点眼 | ○〜◎(用量依存) | まぶしさ・近見調節への影響モニタリング |
LASIK等 | 不可逆 | 手術 | — | 手術特有の合併症・角膜厚要件 |
8) 日本での費用感(自費のめやす)
初期費用:両眼で15〜20万円前後(適応検査・レンズ・装用指導・初年度フォローなどを含む例)。
維持費:定期検診、ケア用品、数年ごとのレンズ交換など。価格は医療機関ごとに異なるため、各院の自由診療ページで確認を。
参考:治療費の解説ページ
9) よくある質問(短答)
Q. 何日で見えるようになりますか?
多くは初夜から改善し、1週間ほどで安定。完全な安定化は約30日が目安です。
Q. 中止したらどうなる?
数日〜数週間で元に戻る可逆的な方法です。イベント前だけ活用するなど柔軟な使い方も可能です。
Q. 何歳から始められる?
年齢で一律制限はなく、適応検査とセルフケア能力、保護者の支援体制で判断します。
Q. 小児の近視はオルソKだけで十分?
屋外活動の確保、近業の休憩、照明環境の工夫など生活側の対策も重要。必要に応じて低濃度アトロピンや多焦点ソフトCLとの併用も選択肢です(主治医と相談)。
まとめ|「日中裸眼」と「近視コントロール」を両立する現実解
オルソKは日中裸眼の快適さと成長期の近視進行抑制を同時にねらえる実用的な方法です。一方で、夜間装用に伴う感染リスクと厳格な衛生管理・定期受診、適応範囲の限界を正しく理解することが欠かせません。興味がある方は、日本のガイドラインに沿い、説明とケア体制が整うオルソK経験豊富な眼科で適応検査を受けましょう。本記事は一般情報であり、最終判断は必ず担当医の指示に従ってください。
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